ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

ヘンな一日(つづき)

(前回の続き)電話の女性は、長女と高校のクラスメイトKさんと名乗った。家へ遊びに来ていて、夜帰り際電車の駅まで車で送ってやった記憶があるが、随分以前のことで私は彼女の顔までは憶えていない。
「お父さんが神主さんだって聞いたこと思い出して電話してみました。S神社の「おみくじ」がよく当たるって聞いたのですが、本当でしょうか」とKさん。そう言えば、Kさんは昔から占いや迷信の類に凝っているようだと娘から聞いたことがある。
「さあーて、どうでしょうね。S神社はこの辺じゃ有名なお宮だが、だからといっておみくじまでよく当たるってな話は聞いてません」と私は答えた。
「そうですか……」ちょっとがっかりしたように彼女の口調が落ちた。
「気に入ったくじが出る確立は、S神社でも他のお宮でも余り変わりないんじゃないでしょうかね」と慰め「何か思い当たるような内容のくじが出たら、その文面をこれからのあなたの生活の手引きにでもするつもりで心の隅にとめておく程度でいいかと……」とつけ加えて電話を切った。
何てえらそうに答えたものの、週刊誌やスポーツ紙の占い欄を目にすると、つい自分の生まれ月や干支のところを読んでほくそ笑んだりする私である。