ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

気分はユ・ウ・ウ・ツ

また雨。暖かい雨には救われるものの、どんより雲の垂れ込めた空はやっぱりうっとうしい。
仕事の手を休めて、何となく窓越しに雨足を眺めていると、玄関に無言の来客。四十代であろうか、見るからに憂うつそうな女性の顔。もぞもぞしていたが、思い切ったように口を開いた。
彼女はパートに出ているが、人づき合いが苦手で、どの会社も長続きしない。仕事の覚えが遅い。同僚との話の輪にはいれない。いつも自分の陰口を言われているような気がして落ち着かない等々。ついでにぼそぼそとぐちまでこぼして、少しは気が楽になったのか肩で息をついた。その肩口から、一瞬すえたような臭いが漂ったかに私の鼻は感じた。
どんな女なのか、私のカンピュータが駆け巡った。こりゃだめだ。カウンセリングの領分だ。お祓いをしたところで彼女が気分一新、明日からはつらつと職場復帰できるのか、私は自分のおつとめに自信が持てない。その以前に彼女の雰囲気から、全く気が萎えていた。
これまで私が見聞きした、子供を育てつつ、明るくひたむきに頑張る女性の話や私の考えなど話して「くよくよしなさんな。笑って、笑って」と慰め、ともかく元気づけお帰り願いました。
ここ二三年、こうした職場での悩みを訴え、神社にお祓いを申し出る何人かの女性と面接しました。私も気を入れ、一生懸命つとめます。大方はお祓い・祈祷を受けてその時は満足した面持ちで「頑張ります」と帰られます。でも、果たしてその後の経過は…どなたからも聞いておりません。
きょうのような事例に出合うたび、神職って何だろうと自問自答します。そして自分の出した答えに、結局また悩みは深くなるばかりです。