ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

郷に入っては郷に従え…

 地鎮祭に奉仕した。
 朝血圧を確かめたら100を少し超えていたので「大丈夫だろう」と心を決めて出かけた。4年前、心臓を患ってからは真夏真冬、氏子地域外からの出張祭典はほとんど近隣神社にお願いしている。
 今回の地鎮祭施主は顔見知りの氏子、神社からの距離も車で10分ほど。お断りしては申し訳ないと思ってお受けした。

 現地は、住宅地図にまだ載っていない田んぼ埋立地。施工業者とも初顔合わせ。略図を頼りに現地に到着すると、既に敷地の四隅に青竹(忌み竹)が立てられ、縄も張りめぐらされていた。
 「神主さん、シデ(紙垂)ください。4枚ずつぶら下げりゃいいんですよね」と待ち構えていたように業者が言った。続いて「盛り砂は、どの辺りにしましょ」と尋ねられたので場所を指示する。
 地鎮祭は、土地柄や施工業者によって祭場の設営が多少違ってくる。たとえばシデのつけ方にしても、業者によっては3枚と5枚、または5枚と7枚と奇数にこだわる方、きょうの施工者のように、敷地の四方に4枚ずつシデをつけると幸せ(四あわせ)で縁起がよろしいとおっしゃる人もある。
 「そちら様がいつもやっているように設営してくださればいいですよ」と快く申し上げる。時には、その場の雰囲気を見ながら「シデは、折り目のこちら側を外向きにナワにつけるのがよし、と私らは教えられています」それとなくアドバイスする程度。たいていの場合、郷に入っては郷に従え、である。
 
 祭典に参列された方々が、納得され満足されてホッと直会のさかずき(盃)を挙げられる、出張祭典はそんな締めくくりにしたいと努めている。