ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

弟よ、妹よ‥・

 8月の初め、娘が、上司らに従って出張、仕事中転んで左足くるぶしを骨折、帰宅し

て最寄りの病院で診察してもらったらすぐ入院、手術することになった。

 

 娘は実家から車で40分ほど離れたM市のマンションに一人住まい。入院手術となると

担当医から親に説明やら保証人やら手順がある。

 娘からの電話で、私は車を運転して病院へ駆けつけた。

 

 主治医は骨折部分の写真を見せながら、かねの板を当て、ボルトで止める(通常の)

1時間半ほどの手術で、心配する程度ではない、とのこと。

 「よろしく、お願いします」ということで、明日午後4時ごろから手術と決まった。

 

 入院は1週間余り、後は自宅療養の予定であったが、わがまま娘は仕事が気になると

主治医の許可を得て4日で退院「二三日お母さんに甘えたい」と実家へ帰ってきた。

 

 「これは楽ちん」と妻の介護ベットを占領、私と妻は狭い布団で休むことになった。

 8畳の寝室に親子3人枕を並べたのは何十年ぶりだろうか――。ひととき、親子はしり

とりゲームで童心に返り、大笑いしながら眠りについた。忘れ得ぬ思い出となろう。

 

 熱いさ中、何度も病院やマンションを行き来し、その間ちょっとしたアクシデントま

であって、気疲れ、体の疲れは老体に堪えたのか、二十日過ぎ体調が怪しくなってき

た。

 胃部あたりが苦しくなり、しばらく頑張ってみたが、耐えられそうもないと判断、妻

に救急車を呼んでもらい赤十字病院へ運ばれた。

 妻は、娘に電話、次いで私の弟にも電話しSOS。同じ市内に住む弟は心配して毎日

病室を訪ねてくれ、また妹にも連絡、妹は妻の食べごとの心配までしてくれた。

 

 こんな時、兄弟はありがたいものである。

 若気の至り、おのれのわがままを押し通し、親兄弟を顧みず、ふる里を捨てた不肖の

兄貴に、何も言わず力を貸してくれる弟に妹。

 あれこれ気を使いながら、小まめに動きまわる妹の姿に亡き母の面影を見た。

 血は正直なものだなあ――。

 今朝は、一番下の妹からも見舞いの電話があった。

 

 平成の市町村合併で、同じ市内に兄弟4人住んでいることになる。

 

 老夫婦二人暮らしとなった今、指呼の距離に兄弟が住んでいるのは、何ともありがた

い、心強いものである。