ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

「父の日」と中国産うなぎ蒲焼

 「父の日」の16日朝。スーパー〇〇店の折り込みを眺める妻の後ろから「あんたがこ

の間から食べたい食べたいって言ってるうなぎのかば焼きが出ているじゃない」と声を

掛けた。

 「父さん、お昼どっかへうなぎ食べに連れてってくれる。それとも〇〇店で間に合わ

せる?」

 「出かけるの、おっくうだしなぁ・‥」と尻の重い私。

 「‥なら、〇〇店へ行って、父さんの好きなもの買ったら?。父の日なんだから・‥」

 「特に食べたいもの思いつかんし、父の日言うてねぎらってもらうほど値打ちのある

オヤジでもないしさ。母さんのお好きなように――」何だかんだしゃべりながら、結局

妻と500mほど離れたスーパーへ車を走らせた。

 

 チラシに大きく出ていた「あなご御膳」は既に完売の札。父の日特製盛合せ寿司や弁

当・‥食指動かず。

 

 あれこれのぞいて、うなぎ蒲焼の前で足を止める。国産一尾2,500余円、国産の解

凍・養殖1,900余円なり。

 スーパーのうなぎは久しく買ったことがない。まずいという先入観がある。

 だから「大してうまくない蒲焼に2,500円はもったいないしなぁ」

 ちょっと迷ってから「試しにいっぺん食べてみるか」1尾1,300余円の中国産を買って

帰ることにした。

 

 炊き立てご飯をどんぶりによそってたれをかけ食べた。

 

 「やっぱりまずいや。焼き具合もだめ、たれの味もまずいわ――」

 「ほんとだね、父さん。ただ、うなぎ食べているっていうだけだわ」と妻も同調。

 「スーパーの中国産うなぎ蒲焼を買うのは初めての終わり、これっきりにしような」

 

 中国の危ない工場廃液の中で養殖されているうなぎもある――いつだったか、そんな

週刊誌の写真をふと思い出し、思わず「げぇっ」となった。

 

 私どもは自宅からほど近いうなぎ屋「〇〇川」さんをなれ親しんできた。

 出前もしてくれたし、家族でお店へ出かけたり、来客を案内することもあった。

 

 ところが、昨年夏ご主人が急に亡くなり廃業してしまった。

 

 町内にうなぎ屋は五、六軒あって、うち3軒は行ったことがあるけど、いずれも味に

なじめなかったり、店の雰囲気が暗かったり、やっぱり「〇〇川」さんを長年ひいきに

させてもらっていたのである。

 

 町外へ30分ばかり車を走らせれば繁盛店があるけど、わざわざそこまで‥‥という気

は起らない。

 

 近ごろは、娘が月1回チワワをシャンプーに連れて行ってくれた時、隣市の人気店か

ら蒲焼を買ってきてもらい、「旨いね。焼き具合もたれの味も、この店に限る・‥」口

いっぱい、気持いっぱい、しばし満足にひたる親子3人である。

 

 ――早いとこ、近くに、旨いうなぎ屋さんを見つけなくっちゃ――。