ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

そして 廃家・‥

 自治会の会合が終わって、しばらく雑談になった。

 

 自分の住まいの周りに、ぽつりぽつり空き家が出始めた、と話す人。「うちの隣りも

無人になった」と相づち打つ人。

 

 町のうちは空き家が増えるばかり。一方、町はずれの豊かな農地は次々埋め立てられ

て、住宅会社ののぼりはためき、新しい住宅が1軒また1軒建っていく。

 「近いうち町の住宅地図が塗り替えられてしまいそうだなあ」長老が嘆いて、立ち話

はお開きとなった。

 

 空き家は全国で820万戸を数えるという。日本の総住宅6,063万戸に対して、7件に1軒

が空き家だそうだ。(2014年総務省のデータ)

 

 帰宅して、妻と昼食を食べながら「やがて、うちも空き家に・‥そして廃家になって

しまうんだろうなあ」行く末を思い浮かべて、二人とも何だかしょんぼりしてしまっ

た。

 

 私どもの資産は、今住んでいる2階建て家屋敷と道路を挟んで向かいに2階建て住居兼

倉庫の、ともに小さな二つだけである。

 

 長女はまだ独身だが、隣市にマンションを買って住み、長男は遠く名古屋市に家屋

敷を構えており、恐らく将来二人とも実家に帰り住む日はないであろう。

 

 現在地は、戦時中の空襲で焼け出され裸同然の養父母が、隣町から新しい土地を求め

て移ってきて、やっと家屋敷を手に入れて再出発した。

 妻にとっては第二の故郷であり、いきさつがあって結局は養子縁組した私としても

第二の故郷ということになる。

 

 

 養父母の「こころ」を思い、この家屋敷の行く末を、あれこれ考え、思い迷ったもの

であったが、もう心配しないことにした。

 正直私自身は家屋敷にそれほど未練はない。

 

 相続税が今より軽減されるとは考えられないが、政治も世の中もどんどん移り変わっ

て行くであろう。

 先のことは、二人の子供が考えてくれる。そう悟ってみたら、ちょこっと気楽になった。