ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

「趣味は」って聞かれても・‥

 クロマチックハーモニカ奏者 南里沙さんのコンサート(※)に連れってもらった。

 

 クロマチックハーモニカという言葉も聞き初めなら、プロのハーモニカ演奏を聴

くのも初めてである。

 クロマチックとは「半音階」の意味。一本のハーモニカで、全てのキーが演奏できる

″便利な″楽器――これは後刻自宅のパソコンで調べて知った。

 

 演奏が始まる。これは、これは・‥思わず緊張し、ダイナミックな音色に目と耳を集

中した。

 オリジナル曲から映画音楽、童謡・抒情歌まで演奏され、アンコールも予期したとお

り。

 ボディ全長15センチほどのハーモニカと、奏者が一体となった、しなやかな

パフォーマンスに酔いしれた1時間余であった。

 

    (※)[三重ゾンタクラブ設立1周年記念チャリティーコンサートin2019。

      3月16日(土)四日市都ホテル。日本薬膳学会監修「薬膳ランチ」~健美

      和膳~付]

 

 

  私、自分は無趣味だと思っている。

 リタイアして、しばらくはぼおーと過ごしていたが、こんな余生ならつまらない、と

少々焦り出した。じゃ、何かやらなきゃ。あれこれ思い浮かべたが、つまるところ自分

にはこれといった趣味がないのだ、とがっかりした。

 

 私の体は、15年ほど前から心臓疾患や肺気腫を抱えている。

 カラオケで声を出したり、ハーモニカで息を吸ったり吐いたりする運動もよい、と聞

いたことがある。

 

 ハーモニカなら子供のころからなじんでいるし、長続きするかも知れない。さて、

手元にハーモニカがない。迷った末、通信教育ユーキャンのハーモニカ講座をやってみ

ることにした。

 

 一括送られてきた教材とハーモニカを手に、早速始めて見たものの、やっぱり長

くは続かなかった。

 

 またまた、ソファに寝転んで、軽い本を読む――相変らずのぐうたら日々に戻っている。

 

 

「父さんも、ハーモニカ吹いてみたら・‥」コンサートの帰り道、娘が車を運転し

ながら声を掛けてきた。「うん。やってみたんだが、三日坊主さ」と私。

 

「ハーモニカが、あんな素晴らしい楽器だなんて、初めて知った。だって、町内シニア

のハーモニカ同好会の演奏しか知らないから・‥。連れてきてもらって、本当に良かっ

た」と、妻は何度も娘に礼を言う。私も、同じ思いだ。

「薬膳弁当も、美味しかったよなあ」親子3人が口をそろえる。高速道路だけでも

片道2時間余の道中、ほのぼの、車内いっぱい幸せに包まれたひと時。きっと忘れ

得ぬ思い出になろう。

 

 机の引き出しにしまい込んだはずのハーモニカを探し出そう。時々、気が向いたら、

吹いてみよう。今度は肩ひじ張らずに、気楽に、のんびり――。