ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

沈丁花の花の香り……

 2平米ばかりの裏庭に、妻が移植した沈丁花が花をつけた。
 背丈は50センチほどだが、数本の枝に四五十個も白い花を咲かせ、辺りに甘く上品な香りを漂わせている。
 チワワ散歩の行き帰り、鼻を近づけては、やや強い香気にひとり酔っている。
 
 沈丁花の香りが好きだ。
 
 高校時代、彼女の家を訪ねてお茶をいただいている時、中庭からそこはかとなく甘い香りが漂ってきて、たちまちその香りが好きになった。香りの主が沈丁花の花だと知ったのは、恥ずかしながら何年か後のことだった。

 沈丁花の香りは、昭和30年代松本清張推理小説「黄色い風土」に「沈丁花の匂いをまとった不思議な美女」が出没して興味をそそられたし、さらにテレビドラマ化され冨士真奈美扮する沈丁花の女を見て、ますます心に残る香りとなった。