ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

お幸せに

 朝、出仕してほどなく、意気のよい若者が窓口に立った。
 にこにこ笑っている。憶えている。去年春、当神社で結婚式を挙げられたTさんだ。
 「宮司さん、お久しぶり。今日は結婚一周年記念日で、お礼参りにきました。妻も一緒に来たかったのですが、勤務の都合で来れなくて残念がっていました……」と幸せそうな報告。
 「健康で、幸せそうで何よりです」と微笑み返す。
 彼「二世の気配がまだなんですよ」
 私「お若いのだから、急がなくとも。せいぜい二人だけの生活をエンジョイされて、お金もがっちり貯められてから、お世継ぎに恵まれるっていうのもいいじゃないですか……」

 去年の挙式当日、私は式を進めながら(この新婚さんは、きっと幸せな家庭が築けそうだ)と想像していたのを思い出した。二十年近く、神前結婚式に奉仕してきた体験からの直感かも。

 終始にこやかに、新世帯一年間の日々を語るTさん。本当に幸せそうで、こちらもうれしく、一日中心弾んで過ぎた。