ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

右向けば、右を向いたまま

 私ども氏神さまは、氏子の地域代表である氏子総代の奉仕活動で維持されている。
 宮司に就任したてのころ、古い総代から「立派な宮司がひとり逆立ちしたって神社はやっていけない。運営は、すべて氏子総代の働きいかんにかかっている」と冗談まじりのあいさつをされた。
 内心(そんなこと、承知してるわい)カチンときたが「ごもっとも」と、相づちを打っておいた。
 総代のお年は65歳から80歳前後。一国一城の主ばかり。市会議員もいるし、現役時代は役所の課長、病院の事務長等々おえら方も多い。
 おっしゃることは、いちいちお説ごもっとも。でも、体は動かない。汗をかかない。氏子が減った、減ったと嘆くばかり。近所に新しい家が建っても、氏子入りを勧めようとはしない。氏子数は全くふえない。だから、神社はいつも貧乏暮らし。
 大祭の準備が始まると総代長がいつもぼやく。「テント張って、テーブル並べて」と頼んでも椅子を出そうとしない。椅子が出ていない、と言うと「椅子出せとは言われなかった」との返事が返ってくる。右向け言ったら、いつもでたっても右向いたままの格好だよ……。
 ひとりひとりの総代はみなさん立派な方なのに、集合するとさながら烏合の衆。総代長の統率力が足らないのか、宮司の不徳の致すところか。総代長と嘆き合う。
 氏子総代といえば、昔は名誉職だったというに。今は大方が初めから逃げ腰。こんな総代方に動いてもらおうとするには――これはなかなか一筋縄ではいかない。