ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

いのり 祈り

社務所の窓越しにこま犬が見える。
向拝所で拝礼を終えた参拝者のうち、幾人かがこま犬の前に立ち寄る。
大方の人は、こま犬の足元に1円玉か5円玉まれに10円玉をお供えする。
次にこま犬の頭、口元、胸からしっぽをなで、次にその手で自分の体の気になる部分をなで回す。顔ぶれは日参の女性がほとんど。どの顔も真剣そのもの。これもまた祈りのひとコマである。
これでほっと小さな安らぎを感じることができたなら、きょう一日心穏やかに過ごせるのであろう。
参拝者の切れ間、私は竹ぼうきでこま犬周りの玉砂利を掃き清める。
大抵朝夕の2回、こま犬の足元に重なる1円玉をかき集め向拝所の賽銭箱へ納める。私の不在時をねらって現れる賽銭ドロから「小さな祈り」を守るためである。