ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

雨の午前中

 夜来の雨に洗われて、アジサイの花がにわかに色つやを増した。境内の一隅、そこだけ浮き出て、えも言われぬ風情。
 雨の午前中は何となく気分が落ちつく。庭木のサツキも静かである。きょうあたり、この地方も梅雨入りだろう。

 思い出したように電話が鳴った。長女からだ。電話の内容は、娘が月1回掲載の1年間という予定で書いている日刊新聞のコラム欄、その連載期間をしばらく延長してもらえまいかと担当記者から打診されたとの話。娘はいま管理栄養士で大学講師。
「ネタ切れしない自信があるなら、連載続けさせてもらったら」と返事した。
このところ娘とメールのやり取りも多い。原稿の下書きを添付して送ってきては「お父さん、いっぺん目を通して。」
 機嫌がいい時には(お父さんの夢を、私が実現してやる)と可愛い言葉を漏らす。私が30代半ば不本意で新聞社を辞め、養父から家業の小売店を引き継いだことを、娘はずうっと気にしているようだ。
 一年365日今は緑に包まれた氏神さまの社務所で穏やかにお勤めする身。老体には小さな幸せと言えよう。娘の気持ちだけはうれしく胸にしまっておく。

雨は降り続いている。気分転換、午後からは書類の山と向き合おう。仕事、仕事。