ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

氏子をやめます

 昼下がり。ご老体が社務所にやってきた。
宮司さん。私んとこ、今年度から氏子をのかせてもらいます」
いかにも申しわけなさそうな顔をして、耳に手をかざした。
耳が少し遠いらしく、私の返事を聞き逃すまいといった表情。
「それは残念ですね……」と私。
ご老体は、神社の近くの方で、今は奥さんと二人暮しだという。
「ことしあたり氏子総代の順番が回ってきそうだが、老体で務まりそうもないので、この際氏子(組織から)のかせてほしいので宮司さんにお願いに上がりました」との話。
 当社は、2千人近い氏子組織によって維持されてきたが、ここ十数年前から年々5戸、10戸と氏子数が減りつつある。
昔からの家々は核家族高齢化が著しく、夫婦どちらかが亡くなると、それを潮に氏子組織から脱退する例が多い。
息子夫婦が実家近くに住んでいても、彼らの大方は氏子にはいらない。
町内には新しい団地やマンションが次々できているが、氏子にははいらない。
氏子総代は「アパートの人らは、全く氏子にはいってくれない。相手にならん」とぼやいているが、はいらないのは当たり前で、勧誘に歩く氏子総代はまずいない。
宮司が社務所を閉め切って、氏子勧誘に走り回るわけにもいくまい。
新年度早々、どうもお寒い話題が多い。