ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

事故は神社の責任?

宅建設業のA社から地鎮祭を頼みたいとの電話。
二三年ぶりだろうか。A社は、田畑を持て余している高齢者農家をターゲットに、共同住宅の経営を勧めて、社業大いに潤ったのかひところ大変な鼻息であった。当町とその周辺地域でも次々と農地が埋め立てられてアパートが建ち、A社はその都度当神社に地鎮祭を依頼してきた。
そんなある日の地鎮祭。祭壇を準備中の私のそばでA社支店長が言った。
「建築工事の途中もし事故など起こったら、それは地鎮祭をやった神社のご利益がなかったからだ。そんなお宮には二度と地鎮祭を頼まないのがわが社のやり方よ」
私が地鎮祭を奉仕した建築現場では幸い?無事故が続いたのか、あのころ月三四回の割でご指名がかかった。
やがて当地域でのアパート建設も飽和状態になったのか、ぷっつりご無沙汰であったが、きょう久しぶりのお声がかりであった。ということは、私が地鎮祭をやったA社のこれまでの工事はすべて無事に竣工していたようだ。
ところで「今回の場所はどこですか」とたずねると「ちょっと遠い。B市だが、行ってくれるかな」とのこと。
B市まで車で1時間の距離。神社も地元に大小幾つかあろう。私がそこまで足を延ばすのもはばかられる。「ありがたい、せっかくのお申しつけですが、どうか地元の神社へお願いしてください」と丁重にお断わりした。