ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)

妻の粗相

 老妻が、自宅階段の下から4段目あたりから落ちた。2度目である。

 

 私が、2階の部屋で探し物をしていると「お父さん、何してるの?」と階下で妻の声。面倒くさいので黙っていると、そっと上がってくる気配。その途端、ドスンと音が響いて「痛いッ」と悲鳴。

(また、やったな)ビクッとして階下を見ると、妻が転がって頭を抱えている。

 

 「動くな」と声をかけ、あわてて階段を降りた。幸い切り傷や出血はなさそうで、大きなこぶが出来ている。

 

 「大丈夫だ、じっとしてな」と安心させ、「頭を打っているから救急車を呼ぼうな」と納得させ、私は妻の健康保険証を出したり戸締りを確かめ、飼い犬のチワワに「留守番していてね」と言い聞かせ?てから119番。

 意識はあるか、吐き気はないか等々、119番電話口の問いに答える。

 その間に妻はそおっと身づくろいしたり、トイレを済ませたり。

 

 消防署から家までは1キロほど。直線の都市計画道路だから数分もたたぬうちピーポピーポーの声が近づいてきた。

 

 この日の救急指定病院は日赤。妻が日赤で診てもらうは初めてである。

 

 CT検査が終わって、診察室へ呼ばれた。

 

 医師から、特に気になる症状が出ているようには見られないので、自宅で安静に過ごすように・・・と説明されて、思わず「先生、ありがとうございました」と心から礼を述べ、ほっとした。

 

 頭を打った患者と家族への今後の注意事項が書かれた紙や痛み止め頓服の院外処方箋をもらって、タクシーで自宅に帰ることができた。

 

 

 家内の階段転落‥‥これは″粗相″である。あやまち、しそこないである。軽率だ、と叱るには私は酷であろうという気がする。

 

 ふだん気を付けていても、誰でも起こり得る‥‥無意識の部分。どうにも制御できない、人間の弱い部分なのであろうかー。

 

 神社で神職が神に奏上する安全祈願等の祝詞(のりと)には「手の躓(まがい)足の躓あらしめず」と祈る語句があり、つまずいたり、あやまち、過失のないようにと、日本人は古くから神に救いを求め祈ってきたのであろう。

 

 そんなことあれこれ改めて感じさせられた出来事であった。