ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)

「お父さん、離婚考えたことある?」

   いつものように、勤め帰りの長女が、車を運転しながら電話してきた。(ブルートゥースを使って社内ハンズフリー電話)


 親子のたわいない話ばかりだが、時には今日みたいに突然ドキッとするような問いかけをされることがある。

 「お父さん、お母さんとの離婚考えたことってある?」
 「ない。思ってみたこともないなあ‥‥」


 (何を、今さら‥・)聞くんだよ。


 「じゃぁ、夫婦けんかすることは?。ないでしょ、仲がいいんだから」
 「そりゃ、口げんかすることぐらいはあるさ」
 「ふうーん、それで‥・。」
 「それでって、言い合い始めても、じきに、詰まらないこったと思ってやめてしまう」

 

 同じ血を分けた親兄弟だって性格、考え、生き方はそれぞれである。

 夫婦はもともと他人。お互い百点満点の人間なんていない。自分だって欠点だらけ。威張れたものじゃない。そう思えば、妻に腹を立てることもあるまい。思い直して口げんかの矛を収めるのである。

 結婚生活だって同じこと。
 お互いが言いたい放題、やりたい放題だったらことは収まりっこない。早いうちに、取りあえずどちらかが負けた振りでもして折り合うことだ。

 私ども年代の大方の道徳感覚では「結婚は一生もの」。

 私など初めから染みついている。

 夫婦が末永く、仲睦まじく生きて行くには相手をわかり合い、気持ちを思いやることだ。相手が一歩出たら、こちらが一歩下がってやる‥それぐらいの度量があっていい。

 「人生は辛抱の連続だ」って昔から言うじゃないか。

 

 (と言ってはみたものの、自分も若い時には「俺に逆らうのか‥‥」と空威張りしてみたことも一度や二度あったけど)。

 

 昨今は離婚・再婚が多いと聞くが、今の世代には、それなりのモラルがあるのだろう。

 私ども古い人間が、とやかく口をはさむことはなかろう。

 

 そんことあれこれ腹の中で考えたり、しゃべっていたら、長女は

 「へぇー、やっぱり人生は辛抱かあ‥‥」とつぶやいて、電話を切っていった。

 

 同じ町内に住む知人Aさんの孫娘が、近ごろ離婚して親元へ帰ってきていると耳にした。私と同じ年頃のAさん、その心のうちはどんなだろう‥‥。