ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

イメージする……彼の女性(ひと)は

 母の妹が他界し、その葬儀に参列するため郷里へ帰った。

 

 久しぶりに親戚や幼なじみの顔と出会い、あいさつを交わした。とっさに名前を思い出せず「森の孝夫(仮名)やがな‥」と言われ「あっ、ごめん。見間違ったわ」と笑ってごまかしたものの、ばつが悪かった。

 孝夫ちゃんは子供時分は母親似だったのに、五十を超えた今はすっかり叔父さん似のおやじ顔になって‥。

 そんな場面が二度あって、せっかく気安く挨拶してもらったのに、きまり悪い思いをした。

 

 ちょっと古い話だが、気の合う高校同級生四、五人と一杯飲んだ席で、酔いの回ったk君が「お前の町のS美容院の娘さん、魅力あるね。俺の大好きな女優若村麻由美の若い時に似ている。すっかり惚れちゃった」と私につぶやいた。

 話を聞くと、彼の奥さんを車でS美容院へ送ってきた時にたまたたま店の娘を見かけてすっかりのぼせ上ったもののようである。「いい歳したおやじが、何というこっちゃ‥」と思ったが「結構、結構、いいじゃないか」とはやし立ててやった。

 後日、S美容院の娘さんの顔を見かけることがあったが(どこが若村麻由美に似ているんだろうか)と私は首をかしげたものであった。

 

 自分が好きな女性を女優のだれだれに似ているとか、美化したいもののようである。逆に好きな女優さんやテレビタレントの顔を自分の彼女に目元がそっくりだ、横顔も似ている‥と、いよいよ想像は限りない。

 

 やがていつか夢冷めて、イメージと現実(虚像と実像かな‥)の落差に、自分ながら落胆するもののようである。

 

 幾つになっても、男ってやつわ……。