ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

お粗末、老体の祝辞

おいの結婚披露宴の席で、親戚代表としてあいさつしてほしいと前もって妹夫婦に頼まれていた。軽く引き受けた。私も宮司として神前結婚式を取り仕切り、式後祝辞を述べている。お祝いのあいさつは経験済みだ。念のため「あいさつの仕方」という本を引っ張り出して、親戚代表あいさつの「形」を再確認してその日に備えた。
当日会場に着くと、司会担当の女性から「ケーキ入刀が済んだら伯父様トップでご祝辞をお願いします」順番が最初だと言われ、ちょっと面食らった。これまでなら伯父のあいさつは式次第の終わりから二つ目、つまり両家代表謝辞の前あたりに司会者から指示されるのが普通。
伯父の謝辞は出席者へのお礼、祝辞の送り主へのお礼を述べるものだが、私がトップではその前にはまだ誰も祝辞を述べていない。たとえば謝辞の中で「先刻来、たくさんの心温まるお祝辞を賜り……」と言うところを「賜るであろう……」と予想しての言い回しに等々苦肉の変更を余儀なくされた。
帰宅してから家内の講評?「言葉もそつなくはっきり聞きやすかったけど、しゃべり方がゆっくり過ぎた感じ。歳かね、お父さん」
やっぱり間延びしていたか。若いころは「お前のしゃべることは早口でようわからぬ」と母親からしかられたものだが―。日ごろ神社ではあいさつする機会が多い。総代会、役員会、祈祷や大祭終了後の宮司あいさつ等々。かねがね家内から「お父さんは未だに昔の記者時代のなごりで早口だから、今は宮司さんらしく落ち着いてしゃべりなさいよ」と注意されていたのだが、それもいつの間にか歳を重ねて何事にもスローモーになってしまったか。実はそれに気づいて、先ごろから自分としては、昔とは逆に、スピーディにしゃべるよう意識して気をつけていたつもりだが、ちょっと油断するとこのざまだ。ああ。