ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

セクシーな電話の声に惚れました?

いつごろだったか、事務連絡のためしょっちゅう電話するA神社の同輩から「うちの巫女(みこ)が、お前さんの電話の声に惚れた、っていつも言ってるよ」と冷やかされた。「そりゃ光栄だ」と照れ笑いしたが、そのまま忘れてしまっていまだにその巫女の名も顔も知らない。
はるか昔、新聞記者駆け出しのころ連絡部で毎日電話で仕事。ある日受話器を取ると「だれ、あんた。ぞくっとするセクシーな声ね」と年増らしき声。その電話は、指名された先輩女史記者に取り次ぐ。
受話器を置いた先輩女史いわく「ワンちゃん、君の顔を見に来るって言ってたぞ。彼女は海千山千だから、相手にしたらちょいちょいにもて遊ばれちゃうぞ。君のサラリーじゃとても付き合いきれんよ」と忠告してくれた。ほどなく編集局に顔を見せた電話の主、美人ではないけど男好きのする30歳近いデザイナーだった。B新聞の支局長といい仲だとも耳にした。
私の声が、電話の相手にどのように聞こえるのか自分にはわからないけど、連絡部にいた1年ほどの間に、電話でのやり取りについて勉強することができた。警察担当になったころ先輩から「サツの電話交換手と仲良くなれや」と悪知恵をつけられた。なるほど、声を憶えられると夜勤の時など助かる。電話一本で警察の動きをうかがい知ることもできる場合だってある。他社の中には、交換室に忍び込んで、おやつを差し入れ電話交換嬢の気を引く猛者もいたようだ。

電話の応対は「明るく、元気な声で」が私のモットー。言葉はっきり、心を込めて。