ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

言うこと、すること

氏神さんは、いずれ消滅でしょうな

と、神職の耳に穏やかならぬひと言。どうでもよい用件で社務所に立ち寄った小さな印刷屋の老社長。いつもの持論を一席。
「子供の教育が悪い。親のしつけもなってない。子供が神仏をあがめないのは、幼いころから手を合わすことを教えられていないからだ。小さな草花や小鳥、虫たちと遊んだことがないから、自然との共生や生命の尊さを考えたことがない……」。
「こんな人間ばかりになったら、氏神さんなんかまず見捨てられ、社殿の改修もできず、そのうち崩れた石積みの跡だけになってしまうでしょうな……」。
「はあ…」と気の乗らぬ返事をくり返していると、長話し過ぎたことに気がついたのか「宮司さん、まあ頑張ってくださいや」と愛想笑いを残して、社務所玄関に横づけしていた高級車に乗り込んだ。
そのまま車をバックして、道端で回転させて帰って行くのかと思ったら、逆に一旦わざわざ社殿近くへ大型車の鼻先を突き出して、神前で大きくターン、玉砂利を巻き上げ帰って行った。神さま、びっくりなさったでしょう。
神さまに何と無礼な。これこそ不敬の極み。さきほどのご高説、ああ空しい限り。