ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)。「ワンちゃん」は、昔、駆出し記者のころ先輩がつけてくれた。このあだ名、今では遥か青春時代のよすがでしょうか。

チョコ、もらったぞ

社務所の窓口に可愛い女性が立った。ニコッと笑って、頭をぺこり。
一瞬、誰だっけ…。ああSちゃんだ。「久しぶり…」上がりなよ、と事務室へ招く。
「これ…」と彼女が差し出す小さな包み。
「なあに」
「バレンタインでしょ」
「ありゃ、そうだったな」
「ほんの、ちっぽけなものですが」と、はにかむようなしぐさ。
いえいえ、とんでもない。ありがとさん。だって、僕にとってことしたった一つきりのチョコです。
おととしの夏休み、宿題調べで社務所を訪ねてきて以来のおともだち(と僕は思っている)。時折メル交換をしています。今春から大学生。数ヶ月顔を見ないうちすっかりきれいに大人びてびっくり。
「毎日が楽しくって、充実しているんですよ」そうでしょうとも、僕だって、そんな昔がありました。
厳格な教育で有名な神道系の高校に在学しているとはいえ、今どきめずらしいほどしっかり自分の考えを持った女生徒だと見守ってきたのでした。進路のことで両親と意見が合わず悩んだ時期があったね。僕の意見、それほど参考にはならなかったと思うけど、よく決心がついたね。社会福祉学部へ進むのだと熱く語る彼女の話につられ、共感し二時間ほどあっという間に過ぎました。
「こうやって話をしていると、Sちゃんいつの間にか遠く高い所へ羽ばたいていった感じがする。文字どおり旅立ちの春だね。頑張ってね、祈ってる」。
いつしか私も元気をもらった気分。まだまだ頑張らなくっちゃ。
同時になぜか、管理栄養士として遠い空の下でひとり頑張っている長女に思いをはせ、健康を祈りました。