ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)

もののけを追っ払ってよ

顔見知りの老女が社務所の窓口で訴えるように「米寿になったので、厄除けのお祓いをお願いしたいが…」両手を合わせました。
「八十八は年祝いですね。3月初めに厄除祈願祭があるので、その時厄のお方や年祝いの方々とご一緒にいかがでしょうか」と勧めたら「めっきり体が言うことを聞かなくなって、それにあちこち悪い出来事ばかり。きっと私の寝室に邪気が満ちているんですよ。このところ息子も運の悪いこと続きです。宮司さん、私の家の邪気を祓ってくださらんか」と真剣、これが本音だったようです。
「あなたは信心深くて、お元気なころには氏神様に日参されていたでしょう。神さまはよく知っておられます。もののけなんていませんよ。あれこれ悪い方に考えないで。そのうちいいことがめぐってきます」そんな慰めようしかできません。
こういったお祓い、祈祷は苦手です。もののけ何て信じないからです。仕事だと割り切って、形どおりやるだけなら、それなりの祝詞の例文もある。しかし、私の気がはいらないのです。神主を何年やっていても、迷いから抜けられません。またしばらくは、ちょっと憂うつな時間が続きます。