ワンちゃん旅の宮余話

ワンちゃんはニックネーム。愛称「旅の宮」元宮司のつれづれ身辺余話です。

総領の甚六

幾つになっても世渡り下手である。小さいころから「総領の甚六」と言われながら育った。断わり下手である。仕事や役職を押しつけられて断われない。だから、幾つもの仕事を抱えて年中うろうろ。セールス、それも女性のトークにこれまた弱く、何だかんだの末…

和服姿の初詣はごくわずか?

晴れやかな着物の初詣客はほんの二三人。当社で毎年見かける姿は減っている。老若男女問わず普段着姿がほとんどである。ハレの日にはまず装いを改めて――そんな日本人の心意気を望むのは、今は空しい時代なのかも知れない。 授与所は三が日臨時の巫女さんに応…

賽銭箱に万札

大みそかの宵から元旦夕方まで、私どもの地方では少し冷え込んだものの風がほとんどなく穏やかな年越し参り、初詣日和であった。 私どもの小さな神社でも大賑わい。午前零時前から1時過ぎまでの間、参道から向拝所にかけて参拝者でぎっしり埋まり、お参りに…

死後の行く先

50歳代後半と思われる女性が社務所を訪ねて来られた。 用件は、独り住まいの父親が他界し、実家が空き家になってしまったので家財道具を始末、この際神棚も撤去したいがどのように処理すればよいのか教えてほしい、とのこと。近ごろは、こういった相談がち…

お粗末、老体の祝辞

おいの結婚披露宴の席で、親戚代表としてあいさつしてほしいと前もって妹夫婦に頼まれていた。軽く引き受けた。私も宮司として神前結婚式を取り仕切り、式後祝辞を述べている。お祝いのあいさつは経験済みだ。念のため「あいさつの仕方」という本を引っ張り…

めいの結婚式

1週間のうちにおい(甥)とめい(姪)の結婚式に招かれ、私どもも夫婦で出席した。 挙式はどちらも教会式。この歳になってアーメンは初めてで緊張していたが、すぐリラックスできた。明るい式場、若い女性の聖歌隊、スピーディな式次第――チャペル式のウエデ…

菊花香る

ことしも境内で菊花展が始まった。秋はやっぱり菊。わがA町の「まちのはな」でもある。 町内の愛好家が手塩にかけて育てた大輪おおよそ八十鉢。向拝所から社頭の2張りのテント辺りは、朝から菊花の香りいっぱい。11月10日まで参拝者の目を楽しませる。この…

秋の夕暮れ

気がついて立ち寄れば、キンモクセイもあらかた花を落とし、次はサザンカまで境内に花はない。サクラの葉も早や黄色に染まり始め、木の下は一面茶色の病葉(わくらば)が重なりあう。 秋はいつも音もなく忍び寄り、やがて駆け足で過ぎてゆく。人生を重ねてみ…

しつけが必要なのは、お母さん……

境内林に隣接してカトリック系の私立幼稚園がある。この時期毎日、運動会に備えて練習を重ねるブラスバンドのにぎやかな音が当社の境内にまで響き渡る。 こちらも知らぬうちに憶えてしまって鼻歌に出てくる。「おや、だれか音程間違えたぞ」つい心配したりも…

ホトケの徳さん

親類や職場の元同僚はT・Hさんのことを「ホトケの徳さん」と呼んでいる。人柄は温厚、仕事は黙ってこつこつ。手先は実に器用。めったに不平不満をもらさない。 定年後もしばらくは資格を生かしてボイラーマンを務めていた。そのころからA地区の当社氏子総…

淡い恋心

同窓会といえば高校の同窓会。宴たけなわ。幹事役の私は一人一人の席を順番に酒をついで回った。やがてC子の席に相対すると、待っていたかのように彼女「高3の時、あなたが声をかけてくれるの待っていたけど、見向きもしてくれなかったわね。なにしろ生徒…

クラスメイトの訃報

秋の彼岸を告げるかのように赤、白の花を開いた彼岸花、いつの間にか盛りを過ぎ、今朝は大方が枯れかかっていた。明日から10月だもんな。 購読紙のきょうの朝刊、地域版のA市広報「お悔やみ」欄に、小学校からの同級生B君の名前を見つけた。紙面を見直した…

無題

境内に一本きりのサルスベリ。その白い小花の長い季節が終わったと感じたきのう、宵のうち一陣の風とともに秋の空気に入れ変わった。きょう早朝、出社途中の車窓に流れ込む風きわめて爽やかであった。 昼間は、残暑まだ厳しい。10時から例大祭(例祭)。正…

けがれ……気枯れ

「厄除け祈願をしたいのだが…」と電話で祈祷の申し込み。 「厄年のお祓いでしょうか」とたずねると、電話口の男性はちょっとためらってから「いえ、物損程度だが車で事故を……」また口ごもる。 町内のA社に勤める30代男3人一緒で願いたいとのこと。ここま…

セクシーな電話の声に惚れました?

いつごろだったか、事務連絡のためしょっちゅう電話するA神社の同輩から「うちの巫女(みこ)が、お前さんの電話の声に惚れた、っていつも言ってるよ」と冷やかされた。「そりゃ光栄だ」と照れ笑いしたが、そのまま忘れてしまっていまだにその巫女の名も顔…

お盆・ふるさと・あと継ぎ

お盆で里帰りした長男一家を連れて、私の実家へ墓参に出かけた。今の住まいから、私の古里までは車でわずか30分の距離。 去年の夏亡くなった実母の真新しい墓石にサカキを供えながら(実家は神式)、孫たちに先祖の話をさらっと聞かせた。 「この墓石がお…

母と娘のボランティア

妻と長女が、病院でボランティア活動してきた。 管理栄養士で大学講師の長女が、講演で知り合った医師から「看護師らが、メークアップ講習で女性入院患者の気分転換を図ってみてはどうかと提案してきた。適当な美容師を知らないか」と頼まれた。長女は「母が…

初盆

初盆の7日夕方、社務所を早仕舞いして隣町の親友宅を訪ね、祭壇の彼の位牌に手を合わせた。 「無沙汰ごめん。早いもんだなあ、もう1年たってしまった。そちら(幽界)は、どうだ。お蔭様で俺はまあまあだ」と語りかける。写真の彼は答えるはずもなかったが…

宮司のトイレ掃除

参道を挟んで事務所から60メートル離れた木立の陰に境外トイレがある。先ごろ工費130万円で改修したばかりのピカピカ水洗で、曲がりなりにもバリアフリー。 心配したとおり、早速汚された。昼間の利用は、ほとんど姿を見ない。私が退社した夕方から翌朝まで…

デートの会話

たも網や虫かごを持ったジイジと孫が森へはいって行く。学校が夏休みになると、鎮守の森は毎日朝から元気な声が響いてにぎやか。4ヘクタールに上る当神社の土地山林はすべて国史跡に指定されているので、郷土研究や宿題調べで訪れる地元中学・高校生はもと…

結びのひとこと

おばあちゃんは汗びしょり… 大安の土・日は、数週間前から初宮参りなどおめでたい参拝・祈祷の予約がはいっている。17日の大安日曜もそんな一組が。50歳そこそこの若いおばあちゃんが、何日か前わざわざ勤め帰りに社務所まで車を飛ばし予約申込をされて行か…

カサブランカ一輪

妻が、カサブランカの花を寝室に飾った。一輪でも八畳の間いっぱい、梅雨のうっとうしさを忘れる芳香が漂う。 田舎育ちの私は、子供のころからユリが好きだ。近ごろは山の斜面を這ってヤマユリを探さなくても、筋向いの花屋でカサブランカがすぐ手にはいる。…

と・く・め・い

日の丸を揚げるのは右?左? 事務処理で頭がこんがらがっている最中にベルの音。受話器を取ると老女と思しき声。 「先日配られた神社だより(広報紙)に<祝祭日には日の丸を掲げましょう>と書いてあったけど、近ごろ国旗を揚げる家は少ないね」 相手が何を…

悩みます

久しぶり。A女からメール。内容は、社務所に四五日泊めてもらえないか問い合わせと懇願。理由は、相変わらず悩みごとが多く、神社の静かな環境で過ごせばすっきりするだろうから、という。 Aさんは今30歳前後。高校を出てB神社の巫女(舞女)を5年、そ…

ぞうきんを身にまとう

同じ郡内の神職が、順に当番を務める祭典に参列した。ことしは80歳近い宮司とその近隣神社の神職2人が役を分けあって神前にお仕えする。宮司は礼装である斎服(さいふく)、以下の者は浄衣(じょうえ)といういずれも白い装束を着け整列した 先頭の宮司さん…

月日のたつのは

テレビドラマ「はぐれ刑事純情派」最終回を見た。18年間も続いたそうで、回想シーンに出てくる安浦刑事の若いこと――。 事務室デスクの引き出しから写真を探し出した。今の神社で初めてお宮参りの祈祷を務めた記念のスナップ。赤ちゃんを抱いた母親と並んだ狩…

Nさんの祈り

猛暑の昼下がり、Nさんが新車のお祓いに。近ごろ自損事故ばかり起こすのでお祓いしてすっきりさせて、とひと月ほど前にも清め祓をしたばかり。 Nさんが重ねて話されるには、ずっと以前から身の回りに良くない出来事ばかり。ついには体調不良に陥り、夜は眠…

森の中で

雨を吸った森の緑が深く重く感じられます。 雨の合い間に、古いお札お守を焚き上げました。正月から半年の間に納められた数十体で、お祓いをして炉に火を入れました。しばらくはもくもく立ち上る白い煙。その時、どさッ。目の前を一瞬黒い影がよぎって足元に…

終生勉強で、す……

神職の生涯研修である祭式研修会に出席しました。拝礼の仕方、足の運び方など日ごろつい我流になりやすい作法をチェックし直すための研修でもある。 「地鎮祭の本義」というテーマで、大学の先生の講義を受けました。例年だと一日中実技で夕方には足腰がくた…

ひたすら、ひたすら

町遺族会主催の戦没者慰霊祭が、当社の参集殿で行われご奉仕しました。 宮司として就任以来16度目のお勤め。参列のご遺族の顔ぶれも、年老いて毎年寂しくなっていきます。遺族会の役員に聞くと、会員のうち英霊の親はもう1人残るだけ、妻は3分の1に減り…

あ、ちゃア……

立ちション? 自分の畑で育てた野菜や手づくりの漬け物をリヤカーに積み込み、町内を何十年も商いしている女性がいます。古希を過ぎたろうと思うが、達者です。 照る日は毎日、時刻も決まって午後3時、境内に姿を現します。白い手ぬぐい姉さんかぶり、前か…

素人の目線

「神社だより」を読むのが楽しみ… 時々そんなお声に励まされます。当神社では、広報紙を2千部ずつ年5回発行し氏子さまの啓発に努めています。もちろん私の手づくり。この6月は発行月で、氏神さまのお祭りや催し物案内から神事の意味に至るまでパソコンで…

言うこと、すること

氏神さんは、いずれ消滅でしょうな と、神職の耳に穏やかならぬひと言。どうでもよい用件で社務所に立ち寄った小さな印刷屋の老社長。いつもの持論を一席。 「子供の教育が悪い。親のしつけもなってない。子供が神仏をあがめないのは、幼いころから手を合わ…

雑学

珍問、奇問、難問 神社にいると、いろんなことを尋ねられます。 けさも出社して間もなく、参拝を終えた顔見知りの老女が窓口に寄ってきました。 「宮司さんとお顔合わせたらお聞きしたいと思っていたんですが、屋敷の中にサカキの木を植えてもよろしいでしょ…

言いわけ

決算だ、監査だ、新年度だ…… 何てぼやいているうちに季節はすっかり移り変わり、境内は若みどりがいっぱい。ツツジも満開。 毎年この時期、明けても暮れても仕事の山崩し。連休など夢の夢。代表役員、宮司とは名ばかり、一人神職の神社の実情です。 あれ、ま…

花の命は……

フレッシュ、フレッシュ 昨日満開を愛でたサクラ、今朝はもう散り初めた。 午後から日差しも戻って、爽やかな微風に誘われるかのようにひとひら、ふたひら。参道は雪が積もったみたいに早や真っ白。ぼんやり眺めていると「花の命は短くて…」と、言い古された…

正直な彼女に幸せを

財布にお金はいってなかった… 先週の日曜だったか、ちょっとおしゃれな二十歳代中ごろと思しき女性がおふだ授与所に立った。 いろんなお守りの中から縁結びの袋を三つ手にとって「迷っちゃう。神主さん選んで」。 私は「この窓口でよく出るのはこの柄、この…

花咲き、花散る

週末が見ごろか 参道のサクラ、あすには満開だろうと期待してきのう帰ったのでしたが、今朝方の雨と強風でがっかり。昼ごろにはかなり散ってしまった。でも、あすになれば新しい蕾がたくさん花開くでしょう。 参道に接する境外公園のサクラは既にほぼ満開。…

人の気持ちなんか……

頭の切れすぎる人 頭の回転が良すぎるのか、何でも人の先へ先へ回り、こちらが返事に困る人がいる。 たとえば社務所での雑談で「あの家のことだから、ごう突く張りの親父が息子の後ろから、神社の寄付なんか出さなくていいぞ、って袖引っ張っているに違いな…

孫と息子と娘

ああ、しんど 息子一家が里帰りしたので、昨日は私も数ヶ月ぶりに完全オフ。おじいちゃん、おじいちゃんと一日中孫に遊び相手をせがまれ、夜帰る車にバイバイした後は疲れがどっと。妻も朝から晩まで「おふくろの味」接待でぐったり。おまけに外でひとり暮ら…

花とあらし

東京のサクラ、去年より13日遅れできょう午後開花したと気象庁。 窓から見える境内のサクラを調べたけど、まだつぼみ。あすか、あさってにはちらほら開くだろうか。ちなみに昨年は30日開花と社務日誌に残しているから、こちらも三四日遅れと予想される。 花…

きょうのため息

氏神さまは、氏子の手で維持運営されてます。 各地区の代表が氏子総代。わが社には40人ほどの総代がいて、これが一国一城の主ばかり。土地柄農業者と紡績会社OBが大半、それに商店主や役人上がりのご隠居さん。一堂に顔をあわせると全くの老人クラブ。 宮…

気分はユ・ウ・ウ・ツ

また雨。暖かい雨には救われるものの、どんより雲の垂れ込めた空はやっぱりうっとうしい。 仕事の手を休めて、何となく窓越しに雨足を眺めていると、玄関に無言の来客。四十代であろうか、見るからに憂うつそうな女性の顔。もぞもぞしていたが、思い切ったよ…

ウグイスの声聞きました

きのうまでと打って変わり、朝から浮き立つような春の陽気。 境内に響くウグイスの声。今年初めて聞きました。社務日誌をめくると、去年は30日に初鳴きと書きとめています。参道のサクラは、もう今ごろ見られたのに、ことしの開花は月末か4月初めになるでし…

タヌキの散歩道

参道を散歩するタヌキの姿を見かけた、という声を時々耳にします。やれやれ、キツネのお宿に続いて今度はタヌキか。 町なかに残された3.5ヘクタールの鎮守の森は、小動物や小鳥にとって格好の住家になっているようです。 私は就任早々、氏子総代の力を借りて…

チョコ、もらったぞ

社務所の窓口に可愛い女性が立った。ニコッと笑って、頭をぺこり。 一瞬、誰だっけ…。ああSちゃんだ。「久しぶり…」上がりなよ、と事務室へ招く。 「これ…」と彼女が差し出す小さな包み。 「なあに」 「バレンタインでしょ」 「ありゃ、そうだったな」 「ほ…

浮遊霊がうようよ

宮司に着任のころ、社務所の留守番おばあさんが話しかけてきました。「夕暮れの神社周りは、浮遊霊がうようよいるんですって。怖くないですか」若い新任神主を驚かすつもりなのか、私の顔色をうかがってニヤニヤしている。私も「そんな話聞き初めです。浮遊…

もののけを追っ払ってよ

顔見知りの老女が社務所の窓口で訴えるように「米寿になったので、厄除けのお祓いをお願いしたいが…」両手を合わせました。 「八十八は年祝いですね。3月初めに厄除祈願祭があるので、その時厄のお方や年祝いの方々とご一緒にいかがでしょうか」と勧めたら…

キツネのお宿

本殿裏の境内林に、つい最近キツネが住みついたようです。 森のくぼ地の土手に深い穴を掘って巣をつくり、ひそかに行動しているらしい。樹木の手入れに森へはいった氏子総代(ボランティア)が姿を見かけ「おとなしい、きれいなキツネですよ」と教えてくれま…

ちょこちょこっとお祓いしてや…

拝殿を閉めようかという夕方4時、境内に1台の乗用車がはいってきた。 「車を買い換えた。お祓いしてやって。ちょこちょこっとでええわ」ズボンのポケットからよれよれの万円札。「これで。釣り頼む」 ともかく拝殿に上がってもらってお祓いをし、宮司が神…