ノスタルジー

「ワンちゃん宮司の旅の宮余話」(改題)

いつかどこかで

紀伊勝浦へ妻と一泊旅行。熊野那智大社や新宮の熊野速玉大社をお参りした。 遊覧船で紀の松島めぐりや太地のくじら浜公園を楽しみながら、これは前にも来たことがある風景だ、いつだれと旅行した時だったろう、そんな思いに陥った。 那智の大滝や熊野速玉大…

郷に入っては郷に従え…

地鎮祭に奉仕した。 朝血圧を確かめたら100を少し超えていたので「大丈夫だろう」と心を決めて出かけた。4年前、心臓を患ってからは真夏真冬、氏子地域外からの出張祭典はほとんど近隣神社にお願いしている。 今回の地鎮祭施主は顔見知りの氏子、神社からの…

健康が一番

事務室の窓越しに見える植え込みに、赤と白の彼岸花が満開。 サルスベリとムクゲの陰に、たった数株。それでも参拝者の足がとまる。 季節は正直である。 先ごろから体調がしゃきっとしない。4年前から心臓を診てもらっていた病院の主治医の転勤に伴い、最寄…

倒れそうな鳥居

参道に鳥居が20本ほどたっている。 ほとんどコンクリート造りだが、白木づくりも数本ある。そのうち2本が虫に食われ、湿気で腐食も進んで根元ぐらぐら、心細い状態に陥っている。 総代(氏子の代表)らは「危険だ。早いとこ撤去してしまえ」と騒ぐ。とり…

6月の花嫁さん、お幸せに

天気予報どおり朝から晴れ上がって、水銀柱も急上昇。 あいにくガスエアコン故障中の、蒸し暑い拝殿で11時から神前結婚式。 新郎新婦と両家ご両親の6人が昇殿、宮司の私一人奉仕で式典をとり行った。 お祓いから始まって三々九度、誓詞、指輪の交換、親子固…

いのり 祈り

社務所の窓越しにこま犬が見える。 向拝所で拝礼を終えた参拝者のうち、幾人かがこま犬の前に立ち寄る。 大方の人は、こま犬の足元に1円玉か5円玉まれに10円玉をお供えする。 次にこま犬の頭、口元、胸からしっぽをなで、次にその手で自分の体の気になる…

雨の午前中

夜来の雨に洗われて、アジサイの花がにわかに色つやを増した。境内の一隅、そこだけ浮き出て、えも言われぬ風情。 雨の午前中は何となく気分が落ちつく。庭木のサツキも静かである。きょうあたり、この地方も梅雨入りだろう。 思い出したように電話が鳴った…

埋め草の軽い気持ちが……「八方除け」

神具製造会社のセールスと雑談中「テレビ番組か雑誌の影響でしょうか、近ごろ若い女性の間で「八方除け」のかわいいお守袋に人気があるんですよ」と彼が何気なくしゃべった。 「そんなこともあるでしょうね。今の世の中、何か流行るかわからんから」と私も何…

戦没者慰霊祭

地元A町遺族会主催の慰霊祭が当神社参集殿で行われた。 毎年6月第2日曜日、市長初め議員らを来賓として招き、遺族会員の7割近い150余人が参列して厳粛に斎行されている。 毎年のことだが、慰霊祭前日朝から当神社の氏子総代が五六人奉仕して境内林からサカ…

氏子をやめます

昼下がり。ご老体が社務所にやってきた。 「宮司さん。私んとこ、今年度から氏子をのかせてもらいます」 いかにも申しわけなさそうな顔をして、耳に手をかざした。 耳が少し遠いらしく、私の返事を聞き逃すまいといった表情。 「それは残念ですね……」と私。 …

拉致解決に協力してくれや

またぞろ、である。 電話を取るや、いきなり[宮司さん?」と気安く声をかけられた。 氏子さん?その声聞き覚えありの気がして、思わず「はぁ」と返事して、「しまった!」。 途端に相手は例のドスをきかせた声。講釈のマニュアルを読み上げた末「4万何がしか…

こころが揺れて

先日、初宮まいりで昇殿、祈祷を受けられたAさん夫妻からはがきが届いた。その節、向拝所をバックに写した記念写真を送ってあげた礼状である。 その日は朝から七五三と初宮の祈祷が交互に続き、ちょうどAさんで予約受付分が途切れて体が空いたので、デジカ…

秋は駆け足

午後4時前、もう境内に日差しはない。にわかに冷え込んできた。そろそろ拝殿を閉めてこようか。朝から数人の氏子総代が出て菊花展を撤収、宮司名の感謝状・粗品(撤下品)を携えてそれぞれ出品者宅を回り、作品を返し礼を述べて第5回菊花展は無事閉幕した。 …

しち・ご・さん

町内の菊花愛好家から出品された献花展、ことしも境内で開催中である。 色とりどりの大輪の菊をバックに記念撮影する着飾った親子連れ。神社がちょっと華やぐ七五三参り。朝から大賑わい。明日の日曜日も、朝一番から予約がいっぱいである。 ありがたい話だ…

神社はゴミ捨て場じゃない!

社務所から50メートル離れた一隅に、古いお札・お守の納め所があって、宮司のデスクから窓越しによく見える。 納め所にはほとんど毎日、入れかわり立ちかわりお札やしめ飾りを納めに来る人の姿がある。絵馬や破魔矢など小物から神棚、結納品、ひな人形にぬい…

カブトムシはどこへ消えた

境内林は虫取りの子らで賑わっている。歓声を上げているのは、つき添っている親たちの方みたい。 虫かごをのぞいてみれば、子供らが期待するクワガタやカブトムシの姿はない。セミやトンボ、たまに小さなチョウや羽虫。 「せっかくお宮の森を訪ねてもらった…

欲張って損……

やはり日曜日だ。昼前に初宮詣(はつみやもうで)の親子連れ3人。ついでに新車のお祓いもしてほしいとの申し出。 当社の祈祷料は、宮参りでも車のお祓いでも安産、厄除け祈願など何でも5千円以上。でも5千円以上お供えの人は皆無。実際は5千円均一みたい…

ヘンな一日(つづき)

(前回の続き)電話の女性は、長女と高校のクラスメイトKさんと名乗った。家へ遊びに来ていて、夜帰り際電車の駅まで車で送ってやった記憶があるが、随分以前のことで私は彼女の顔までは憶えていない。 「お父さんが神主さんだって聞いたこと思い出して電話…

ヘンな一日

社務所の事務も走り始めた10時過ぎ、電話。受話器からの声は中年女性と推定。 「つかぬことお尋ねしますが、神社に内職ありませんか」 「あいにく……」 「座っていてできるような手仕事はないものでしょうかね」 「さあ―。申しわけありませんな」何だかこっち…

見られてる

町内では銀行へ行っても、スーパーへ出かけてもよく誰かにあいさつをされる。ほとんどの場合、その人がどこで出会ったどなたなのか思い出せない。向こうは私を覚えている。 日曜午後、家内にお供して衣料品スーパーに出かけたら「こんにちわ」すれ違った30…

事故は神社の責任?

住宅建設業のA社から地鎮祭を頼みたいとの電話。 二三年ぶりだろうか。A社は、田畑を持て余している高齢者農家をターゲットに、共同住宅の経営を勧めて、社業大いに潤ったのかひところ大変な鼻息であった。当町とその周辺地域でも次々と農地が埋め立てられ…

紫ハカマのご利益は二倍?

さる日、雑談していた氏子総代から聞かれた。 「むらさきハカマ(紫袴)のネギ(禰宜)さんに祈祷してもらうと、あさぎハカマ(浅黄。水色に見える)の神主の祈祷よりも倍のご利益を授かるだろうか。宮司、あんたならどう答えるか」 神職の袴は、おおむねそ…

春なのに  その2

散りそびれた花あわれ。葉桜が風に揺れている。季節の移ろいを横目に、決算事務が忙しい。 一般法人用の会計ソフトを神社用にちょっと応用しながらで、面倒な作業が続く。それでも昔の手書き、電卓に比べると楽である。 決算の仕事を進めながら、頭の片隅で…

春なのに

朝、通用門をくぐると車のフロントいっぱいに満開のソメイヨシノが飛び込んでくる。生い茂る木々の緑をバックに、ほんのりピンクが明るくさわやか。浮き立つ乙女のようだ……何て表現してみたくなる。古い奴だとお笑いくださるな。 さっき境内林にはいったらウ…

梅、満開

臨時舞女2人の助務を得て神前結婚式のお勤めをした。 無事、滞りなく斎行し、喜びの新郎新婦、そのご親族をお見送りした。外は浮き立つぽかぽか陽気。 式場(拝殿)の後片づけをほっぽりだし、デジカメを引っつかむや境外の梅園にすっ飛んだ。三脚を構えた…

総領の甚六

幾つになっても世渡り下手である。小さいころから「総領の甚六」と言われながら育った。断わり下手である。仕事や役職を押しつけられて断われない。だから、幾つもの仕事を抱えて年中うろうろ。セールス、それも女性のトークにこれまた弱く、何だかんだの末…

和服姿の初詣はごくわずか?

晴れやかな着物の初詣客はほんの二三人。当社で毎年見かける姿は減っている。老若男女問わず普段着姿がほとんどである。ハレの日にはまず装いを改めて――そんな日本人の心意気を望むのは、今は空しい時代なのかも知れない。 授与所は三が日臨時の巫女さんに応…

賽銭箱に万札

大みそかの宵から元旦夕方まで、私どもの地方では少し冷え込んだものの風がほとんどなく穏やかな年越し参り、初詣日和であった。 私どもの小さな神社でも大賑わい。午前零時前から1時過ぎまでの間、参道から向拝所にかけて参拝者でぎっしり埋まり、お参りに…

死後の行く先

50歳代後半と思われる女性が社務所を訪ねて来られた。 用件は、独り住まいの父親が他界し、実家が空き家になってしまったので家財道具を始末、この際神棚も撤去したいがどのように処理すればよいのか教えてほしい、とのこと。近ごろは、こういった相談がち…

お粗末、老体の祝辞

おいの結婚披露宴の席で、親戚代表としてあいさつしてほしいと前もって妹夫婦に頼まれていた。軽く引き受けた。私も宮司として神前結婚式を取り仕切り、式後祝辞を述べている。お祝いのあいさつは経験済みだ。念のため「あいさつの仕方」という本を引っ張り…